大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和34年(ネ)1752号 判決

控訴人は前認定の代物弁済契約は、もともと控訴人の被控訴人小野に対する債務を担保する目的でなされたものであつて、その本質は譲渡担保契約であるから、小野はその目的物件を処分してえた代金を以つて自己の債権とを清算し、その余分はこれを控訴人に返還する義務を有するものであると主張するから、その是非について判断する。

思うに、代物弁済は本来の債務の弁済である給付に代えて他の給付をすることにより弁済と同一の効力を生ぜしめる契約であるから、債務の不履行を停止条件とする代物弁済契約若しくはその予約が実質上債権担保の機能を有すること、従つてこれがため債権者がその債権担保の目的で債務者とこのような契約若しくは予約をするものであることは極めて見やすい道理である。すなわち、このような契約若しくは予約は、債権担保という面では、いわゆる譲渡担保契約と同様の機能を有し、同様の目的でなされることもありうるけれども、前者にあつては、目的物の権利移転の効果は債務の不履行を前提要件として生ずるものであるのに反し、後者にあつては、その権利は契約と同時に債権者に移転し、また、前者にあつては目的物の権利移転の効果の発生と同時に、当事者間の本来の債権債務の関係は、債権者のために目的物について権利移転の対抗要件を具備せしめるべき債務者の義務を除いてすべて消滅するのに対し後者について債務不履行があつた場合の効果は必ずしも画一的ではなく、契約内容の如何により債務者の債務が消滅するとゝもに債権者は確定的に目的物の権利を取得するという場合もあれば、債権者は目的物を処分しその債権と処分代金とを清算し、不足があれば債務者に請求し、余分があれば債務者に返還するという場合もあるのである。

これを要するに、債務不履行を停止条件とする代物弁済契約若しくはその予約と譲渡担保契約とは別個の法律的性格を有するものであつて、前者が債権担保の目的でなされたからといつて譲渡担保契約となるものではないとゝもに、譲渡担保契約だからといつて債務不履行の場合に当然に債権者が控訴人主張のような清算義務を負うものではないから、本件代物弁済契約の本質が譲渡担保契約であつて、被控訴人小野がその目的物を処分してえた代金と自己の債権とを清算し、余分を控訴人に返還する義務を有するものであることを前提とする控訴人の予備的請求は、進んで他の判断を加えるまでもなく、何らその理由のないものといわなければならない。

(岡咲 田中 土井)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!